「医師の資格」

2020.07.29 Wednesday 05:53
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    「医師の資格について、ここに見逃す事の出来ない一大欠陥のある事を私は指摘したいのである。
    それは当局が医師の資格を付与する場合現在までの機構においては、学歴、経験、論文の三者による事でこれは遍(あまね)く人の知るところであるが、私は実はそれだけでは、最も緊要なる点を逸していると思うのである。
    それはいかなる点であるかというと病気治療の技能試験である。
    即ち各種の病気に対してより速かに、より良く冶癒せしめ得る技能そのものを第一条件とすべきであろう。
    いかに学歴や経験、論文等が優秀であるとしても、実際に病気を治癒せしめ得る技能手腕がなければ、医師としての資格に欠けているといえよう。
    再三述べたごとく、医学そのものの使命は、病気を治し健康を増進せしむる以外の何物でもないのである。
    勿論、学歴も経験も論文も必要ではあろうが畢竟(ひっきょう)治病目的の為の基礎条件であって、治病の方法そのものでない事は勿論である。
    たとえていえばここに一個の飛行機を製作するとする。その場合、いかに機械や構造の説明が学理的であっても、実際に飛ばなければ意味をなさないのと同様である。
    この意味において、右に述べたごとく治病技能の優劣によって医師の資格を定むべきであって学歴、経験、論文は、付随条件とすべきが至当ではないかと思うのである。
    かくする事によって、はじめて治病医学は真の進歩を遂げるであろう。
    そうして私はその方法として正規の学歴と経験と論文の三者によってまず学士の称号を得させなお進んで博士の資格を得んとするには、前述のごとく治病技能の厳密なる試験を経、その優越を確認する事によって付与すべきであると思うのである。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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