「医学の神聖化」

2020.07.28 Tuesday 05:18
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    前述のごとき国島医博の言のごとく、百年以前と今日と比べて、いささかの進歩もないとすれば、医学に携わる多数者の労力及び資材等の消耗が、人類にとって何らの稗益する所がない訳である。
    私をして忌憚(きたん)なく言わしむれば、右のごとき大消耗によって得るところのものは、福利に非ずして人類の健康を弱め、病者を氾濫させ、生命を脅かすというのでありとすれば驚かざるを得ないのである。
    私は、医学に携わる多くの人達が目覚めなければならない時が、必ず近き将来に来るべき事を信ずるのである。
    その時いかにすべきやという事も考慮しなければならない問題である。
    しかしながら、相当経験をもち、堪能である医家にして、西洋医学の行詰りに対し目覚めている者の相当多い事も私は知っている。
    従って、ある時期に至れば本医術を肯定し、この医術によって国民の健康を解決すべきであるとする医家の続出する事も、私は充分信じて疑わないのである。
    ただしかし、現在としては医家としても行掛りや地位や経済問題等の種々なる障碍の為、遅疑する人達もある訳であるが、これら良心的医家の決意を促したいのである。
    ここで一番困る事は、西洋医学を絶対無上のものと盲信し、それ以上の優れたる医術はないとし、又生れるべくもないと確(かた)く定めている医家の未だ多数ある事である。
    これらの人達の啓蒙こそ、今後における最も努力を要する問題であろう。
    しかしながらあらゆる事物の転換期に当っては、いかなるものといえども大勢に抗する事は不可能である事を知れば問題はないであろう。(「明日の医術 第2編」より)
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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