「医学の神聖化」

2020.07.26 Sunday 05:41
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    「私は現代医学の構成について、常に不可解に思っている事がある。
    それは何であるかというと、医学に対し、専門家以外の者、即ち第三者をして一歩も容喙(ようかい)せしめないようになっている事である。
    臨床上において特に然りである。即ち病気や健康、衛生に関するあらゆる部面に、第三者の容喙する事を以て危険とさえされている。
    その著るしい現われとしては、素人療法は危険であるとか、民間療術者を非医者なるが故に擯斥(ひんせき)しようとする傾向も多分にあるようである。
    かように西洋医学以外のものを危険視し、価値を認めないという態度はいかなる訳であろうかを考えてみるに、多分その理由としては、科学に立脚していないからというのであろう。
    従って、そのものの効果いかんは全然問題にしないというのが実情であって、その独善的なる、ほとんど医学を神聖化してしまっているかとさえ思えるのである。
    しかるに吾々としては「病気は治ればいい」と言うのである。
    「病気が治って完全健康体になる」ただそれだけである。
    それ以外に何を求め、何を望む必要があるであろうか。
    吾々の生命も肉体も、その保健は現実の問題である。
    この現実を破壊する学理も科学もあり得ない。
    この意味において私は、病気が治ればそれは真の医学であり、治らなければ非医学だと思うのである。
    故に、治る医術を信ずる事が正信であり、治らざる医学を信ずる事が迷信である事はいうまでもない。
    又病原を徹底的に説明し得られ、現実といささかの矛盾も来さないものが真の医学であり、病原は不明として説明し得ず、現実と齟齬(そご)するという医術は非医学である。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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