「見えざる力」

2020.07.25 Saturday 06:14
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    そうして今一つ注目すべき事は、現代人は何事に対しても理論を重んじ過ぎる結果、理論に捉われ、事実を第二義的に見るという欠点である。
    社会政策や法規や、医学衛生その他何々等の問題に対し、専門家達が智嚢(ちのう)を集め、理想案として成ったものをいよいよ実行に移すといえども、それが数年あるいはそれ以後に予期のごとき成果が挙がらなかったり、反って失敗となったりする例がよくあるが、それらの事実を深く検討する時、その根本原因としては全く物を重視し、見えざる力を軽視した結果に外ならない事である。
    その最も好適例ともいうべきは、彼のルーズベルトが樹てた天文学的数字の軍備が予期のごとき成果を挙げ得ず、結局失敗に終るとさえ見らるるのは、物のみを主とした方策に頼り過ぎる結果でしかない事は勿論であろう。
    故に私は率直に言うのである。
    現代の日本人が物の力を過大視し、見えざる力を軽視し勝なのは、全く唯物的猶太(ユダヤ)教育に患いせられたそれが未だ多分に頭脳に残存している為であろう。
    しかしながら、時代の急転換しつつある今日、この事に最早飜然として目覚めなければならない事は勿論であり、それの自覚に後れる人こそ、時代的敗者となるより仕方がないであろう。
    ここで再び注意しておきたい事は、私といえども物の力を決して軽視するものではない。
    ただ私は、人間の生命と健康に関する限り、物のみの力では、絶対解決なし得ない事を力説するのである。
    この意味において、見えざる力によっての医術、即ち唯心的医術を推奨するゆえんである。」 (「明日の医術 第2編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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