「腫物とその切開に就て・病患と医学の誤謬」

2020.06.24 Wednesday 05:57
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    「腫物には、瘍(よう)疔(ちょう)やその他結核性等種々あるが、大体は同一と見なしてよいのである。
    それは腫物のすべては浄化作用によって、体内の不純物が毒血や膿汁となって一旦皮下に集溜し、腫脹し、皮膚を破って排泄せらるるのであるから、全く生理的自然作用というべきものである以上、放任しておけば、順調に治癒するのである。
    しかしながら、右の過程は多くは激痛を伴うものであるから、患者は何らかの方法を施さねば居られないのである。
    本療法によれば二、三回の施術によって、いかなる痛苦といえども解消するので、患者は驚きと喜びを禁じ得ないのである。
    故に、相当大きな腫物であって盛んに膿汁を排泄するに拘(かか)わらず、いささかの痛苦もないので、不思議に思うのである。
    そうしてここに注意すべきは、腫物に対し切開手術を行う事の不可である、それはせっかく集溜しつつあった膿汁はたちまち集溜運動を休めるのである。
    切開でなくも針で皮膚を破っただけでも集溜は停止さるるのである。
    故に、その結果として全部の膿汁が排泄されず残存のまま一旦治癒するとしても、遠からざる内に、その付近に再び腫物が出来るのである。
    これは幾多の経験によって鉄則といってもいいのである。故に腫物の場合、飽くまで自然的に、いささかのメスや鍼も用いぬよう注意すべきであって、勿論冷す事も温める事も、膏薬を使用する事も不可である。
    世間よく、腫物を散らすというが、これは、誤りであって散るのではなく押込めるのである。
    せっかく外部へ排泄されんとした毒血を還元させる訳であるから、病気治癒ではなく、その反対である事を知るべきである。」 (「明日の医術 第2編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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