「脳疾患・病患と医学の誤謬」

2020.06.04 Thursday 05:17
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    次に、脳溢血について説いてみよう。この病気も近来非常に多いのは、人の知る所である。
    しかもこの病気は、肺患が青年期に多いように、これは壮年以上ー老年期に多いのであって、社会上幾多の経験を重ね、事物に通じ、円熟の境に達し、人により事業の基礎も出来、社会的地位も獲、これから大いに国家に尽さんとする頃に発病するという、厄介極まる病気である。
    実に個人の不幸は素より、国家社会にとっても、その損失は蓋(けだ)し少なからぬものがあろう。
    そうして、一度この病気に罹るや、たちまちにして生命を奪われる事も多いが、万一僥倖(ぎょうこう)にして生命だけは取止め得たとしても、中風になって、左右いずれかの半身は不随となり、悪性は舌の運動にも支障を来し、言語を操る能(あた)わず、又頭脳に支障を来す事もある。
    しかも完全に治癒するものはほとんどないといってもよい位で、稀に幾分軽快に赴く事がある位である。
    それのみか、この病気の特質として、経過は頗る長期間に渉り、終に斃(たお)れるというまことに悲惨な病気である。
    糅(かて)て加えて、身体の自由を失うから、その看護や取扱についても家人の困苦や費用の莫大等、実に同情に堪えないものがある。
    そうして、現代医学においては、治療の方法は全然ないとされている。
    勿論、予防の方法も無く、原因も適確には判っていないようである。
    この病気について、私の研究した所によれば、左のごときものである。
    まず左右いずれかの延髄付近に溜結せる毒素又は毒血と、左右いずれかの頸動脈付近に溜結せる毒素又は毒血の浄化作用が原因である。
    そうして、一度浄化作用がおこるや、溜結せる毒素又は毒血は、発熱によって溶解し、一旦脳中枢部に侵入し、たちまち流下して、反対側の動脈を通じ、腕及び脚部に溜結するのである。
    そうして、そうなるまでの過程は、実に速かであって、一瞬の間であると言ってもいい。
    故に、発病するや、ほとんど同時位に、半身不随となるのである。
    そうして発病時をみるに、初め、俄然として顔面紅潮を呈し、間もなく反対に蒼白となるのである。
    それは、紅潮は、脳に侵入した毒血が、直に、顔面に氾濫する為であり、蒼白は、それがいずれへか凝結して貧血するためである。
    この場合医療においては、血管を速かに収縮させ、内出血を止むる目的を以て、氷冷を行うのであるが、それはその目的に対しては何の効果もないのみか、他の悪化作用が恐るべきである。
    それはまず溢血するや、溢血しただけの血液は速かにいずれへか流下又は凝結し、血管は瞬時に自然収縮し、溢血は停止するのである。
    即ち氷冷を行うや、益血後、頭脳内に残存せる毒素を、より硬結させるという事になり、機能に支障を来さすのである。
    しかも、氷冷期間永き場合、頭脳は麻痺し、そのため斃(たお)れる事さえある。
    又、脳溢血後、人事不省期間が永い事も、氷冷の影響が大いにあることを想うべきである。
    故に、この病気に罹っても、医療又は何らの方法も行わず、そのまゝ放任しておく時は完全に治癒する事があるのである。
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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