「肋膜炎及び腹膜炎・病患と医学の誤謬」

2020.05.28 Thursday 07:12
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    「肋膜炎及び腹膜炎も相当多い病気である。まず肋膜炎から説いてみよう。
    この病気は医学では三種に別けられている。湿性肋膜炎、化膿性肋膜炎、乾性肋膜炎である。
    元来肋膜炎は、肺臓を包んでいる膜と膜との間隙に空虚が出来、そこへ水即ち尿が溜るのを湿性肋膜炎といい、膿が溜るのを化膿性肋膜炎といい、間隙だけで、水も膿も溜らないのを乾性肋膜炎というのである。
    この病気の原因は自発的と他発的とあって、他発的とは例えば胸部又は背部の打撲又は力業(ちからわざ)、器械体操のごとき労作等によって多く起るのである。
    自発的には何らの原因もなしに発生するのである。
    そうして、湿性の原因は、他発的にせよ、自発的にせよ腎臓萎縮による余剰尿が集溜する為である。
    そうして湿性は医療においては利尿剤の服用、及び穿孔によって排水するのであるが、利尿剤は逆作用が起って、多くは経過不良である。
    いずれかといえば、穿孔排水の方が経過が良好である。
    しかし、一旦治癒しても残存尿結のため再発し易いのである。
    次に、化膿性の原因は、脊椎カリエスとほとんど同様であって、脊髄から膿が肋膜へ浸潤滞溜するので、その膿量は割合多量であって悪性に至っては、医療は穿孔排膿を行い、数ケ月又はそれ以上にわたって、毎日相当量の排膿があるのである。
    しかしながら、最初からの化膿性もあるが、湿性が長時日を経て化膿し、化膿性肋膜炎になる事もある。
    そうして無穿孔にて安静療法を行う医師もあるが、その場合時日を経るに従って化膿は漸次固結し、胸部は板を張りたるごとくになり、この症状を診て医家によっては、肺が腐敗して無くなったというが、これは誤りもはなはだしいのである。
    そうしてこういう症状は、大抵は左右いずれかの肺部であって、膿結した方の肺は、呼吸が不能で静止しているから、健全肺の方が二倍の活動をせねばならぬので、自然呼吸が大きく、困難である。
    この際背部から視る時、一方の肺は不動で、一方は強動であるからよく判るのである。
    しかるに不動の方の膿結溶解を行うや膿は喀痰となって、旺(さか)んに排泄し初め、徐々として呼吸を営み始めるのである。
    これによってみても肺が腐敗して無くなったのではない事を知るであろう。
    以前、両肺が腐って駄目だといわれた患者を、私の弟子が治療して全治し、健康で活動しつつあるという事実もある。
    そうして化膿性は、医療ではほとんど不治のようである。しかるに、湿性にしろ、化膿性にしろ、発病するや、医療を受けず放任するにおいては、自然浄化によって溜尿及び膿は喀痰となって排泄され、大抵は根治するのである。
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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