「既存療法」

2020.05.15 Friday 05:16
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    次に、今日広範囲に使用するものに沃度(ヨード)剤がある。
    この沃度剤の中毒も恐るべきであって、これが頭痛の原因となり、神経衰弱、胃病、腎臓病等、種々の病原となるのである。
    人により、発作的痙攣を起したり、手足の運動不能の原因となる事もあるが、医家は勿論世人もあまり知らないようである。
    次に、外傷等における殺菌用として使用する「沃度ホルム剤」は、もっとも恐るべきものである。
    よく手術のための外傷が、治癒に頗る時日を要することがあってその場合、医家は不可解におもうが、これは全く消毒薬の中毒であるから薬剤を廃し、清水で洗うだけにしておけば、速かに治癒するので、私はしばしば経験して好結果を挙げたのである。
    そうして、沃度ホルムがなぜ恐るべきかーというに、この薬が外傷部の筋肉から滲透する時、患部の周囲またはその付近に、青白色の膿状斑点が出来るのである。
    そうして、それが漸次増大して、その状態があたかも腐りゆくごとく見ゆるので、医家はそう信じ驚いて、手足の場合切断を奨むるのである。
    しかも、強烈に痛むので、その苦痛を免れんため患者も終に切断を受ける事になるのである。
    即ち、放置しても治癒する位の外傷が、沃度ホルムという薬剤によって、障害者にまでなるというに至っては、全く驚くの外はないであろう。
    故に今日 戦傷勇士が、よく手や足を切断するということを聞くが、その多くが、沃度ホルム中毒のためではないかと、私は推断すると共に、そうであるとすれば憂うるの外ないのである。
    故に一言にしていえば、外傷に、黴菌の侵入するを恐るる結果、殺菌作用を行うのであるが、その殺菌作用が、黴菌の侵入よりも、幾層倍恐るべき結果を招来するという事になるので、全く角を矯(た)めて牛を殺す…という類である。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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