「既存療法」

2020.05.14 Thursday 05:27
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    次に私は、医家は固より、世人に一大警告をしなければならない事がある。
    それは予防注射の薬毒による腫物である。
    近来、足部特に膝下の部に大小の腫物が出来る人が多い事は人の知る所であろう。
    これは、予防注射の薬毒が時日を経て足部に集溜し、浄化作用によって排除されんとする為である。
    これらは放任しておけば短期間に治癒するのであるが、それに気が付かない為、薬剤を使用するので、それによって相当長期間に渉るのである。
    そうして不幸な人は、医療によって薬毒を追増される為、悪化して終に足部を切断さるるようになる事も、稀にはあるのである。
    又、注射液によっては、ひょう疽及び脱疽の原因となる事もあるから注意すべきである。
    そうして、これらも手術によって大小の障害となるのは勿論である。
    次に、利尿剤の逆作用も注意すべき問題である。
    まず腹膜炎患者が尿水の為、腹部膨満するや、医療は唯一の方法として利尿剤を用うるのである。
    それが為、一時は尿量を増し腹部縮小して、軽快又はほとんど治癒する事があるが、それは一時的であって、例外なく再び膨満するのである。
    従って、また利尿剤を用いる。
    また縮小するという訳で、かくのごとき事を繰返すにおいて、終には利尿剤中毒となって、逆効果の為尿量は減少し、腹部はいよいよ膨満し頗る頑固性となり、減退し難くなるので、医家は止むを得ず穿孔して排水するのであるが、そのほとんどが結果不良で斃(たお)れるのである。
    右のごとく利尿剤による逆効果の起った患者は、その利尿剤服用の多い程、治癒に時日を要するのにみても利尿剤使用は戒むべきである。
    又睾丸水腫という、睾丸の膨脹する病気や、尿の閉止する症状等も、利尿剤の逆効果による事が多いのである。
    次に、神経痛のごとき、強烈な痛みが持続する場合、モヒ(註 モルヒネのこと)の注射によって一時的苦痛を免れるのであるが、これも多くは繰返す事になるので、その場合、非常に食欲を減退させ、それがいよいよ進むに従って、終に頻繁なる嘔吐を催し、食欲の減退はなはだしく衰弱によってついに斃れるのである。
    次に、ジフテリヤの注射は、同病に卓効ありとせられ、予防に治療に近来大いに行われているが、これらも未だ研究の余地は多分にあるのである。
    私の研究によればこの注射によって悪結果をった者は、あまりにも多い事である。
    はなはだしきは死に到ったものさえすくなくなかったのである。
    そうして中には一週間位昏睡状態に陥って、覚醒後、精神変質者になったものや、胃腸障碍を起したり、神経衰弱的症状になったりして、しかも頗る頑固性であり、数年又は数十年に及ぶものさえあるのである。
    故にたとえ、ジフテリヤに効果があるとしても、悪作用と比較して、功罪いずれが勝るや疑問である。
    同病は本療法によれば、十分ないし三十分位の一回の治療によって、完全に治癒するのである。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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