「下 痢」

2020.05.07 Thursday 07:47
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    「下痢は最も多い症状であるが、まず急性と慢性とに区別される。
    急性は、飲食物による中毒即ち「食あたり」が多いのである。世間よく、寝冷によって起るというが、これはほとんど誤りで、冷によって下痢をするという事は極稀である。
    食あたりの下痢の際、薬剤等によって止めるか又は反対にヒマシ油等によって排泄を促進させようとするが、これは不可であって、自然に排泄させる方が成績は良いのである。
    次に、急性下痢症に、食あたり以外に、俄然として起る頗(すこぶ)る猛烈な下痢がある。
    これは一日十回以上、はなはだしきは数十回に及ぶものさえあり、まれには度数をかぞえられぬ程で患者が意識出来ない程、水便を漏すものさえある。
    そうして血液が混入して腐肉が下るかと想われるような下痢もあるが、これらはことごとく膿や毒血の凝結したものが、猛烈な浄化作用によって排泄されるので、決して肉や臓器の一片だも排泄せられるのではないのである。
    こういう猛烈な下痢は、老人にはほとんどなく青少年に限るといってもいいのであるから、旺盛なる浄化作用である事は明かである。
    故に、放置しておけば必ず治癒するのである。しかるにこれら猛烈な下痢の場合、医家も患者も非常に恐怖し、停止せしめようとする。
    しかるに停止療法を行えば悪化するのが当然であって、その為、死を招く惧(おそ)れさえあるから注意すべきである。
    次に、慢性下痢があり、それが数ケ月ないし数ケ年に及ぶものさえある。
    医家は多くは、結核性となし、怖れて停止療法を行うが、これも非常な誤りで、事実は、腹膜に溜結せる膿が、緩慢な浄化作用によって僅かずつ溶解され、下痢となって排泄せられるのである。
    この膿は、腎臓萎縮による尿毒が、常に腹膜へ集溜するのであるから、腎臓を健全にしなくては、完全に治癒され得ないのは勿論である。
    しかしながら、非常に長年月放置しておけば、腎臓萎縮が自然に治癒されるので、腹膜も治癒され下痢も無くなるのである。」 (「明日の医術 第2編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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