「不快感及び嘔吐」

2020.05.06 Wednesday 06:31
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    「ここに、不快感といっても種々あって、その症状は一定していないが、重(おも)なる症状を記せば、嘔気、痙攣、悪寒、船車の酔、朦朧(もうろう)感、焦燥感等であろう。そうして最も多いのは嘔気であろう。
    この症状は、原因としては脳貧血に因る胃の反射作用と、高熱、食物中毒及び薬剤中毒、溜飲、幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)等である。
    右の内、最初の三つは説明の要はあるまいから、後の三つについて説明してみよう。
    即ち薬剤中毒に因る嘔気は、薬液が胃の粘膜から一旦吸収されて、胃の周囲に浸潤滞溜したものが、時日を経て毒素となって胃に還元し、胃中に凝結する。
    それが浄化作用によって溶解し、嘔気を催し嘔吐するのである。その際嘔吐の液が服用した薬剤の臭いがするのである。
    次に、溜飲は胆汁の排泄であるが、これは、不断に胃中に流入しつつある胆汁が、食物の停滞又は薬剤の妨害に遇って、消化を援(たす)けるという役目に支障を来し、排泄嘔吐するのである。
    次に、幽門狭窄に因る嘔吐は、胃によって消化されたものが腸に流下する場合、狭窄の為通過し難いので、逆に上方に戻ろうとする。
    それが嘔気となるのである。故に、この症状は固形物は不可であるが、流動物なら嘔気が起らないにみて瞭(あきら)かである。
    それは、幽門狭窄に因る流下孔が狭くとも、流動物なら通過するからである。」 (「明日の医術 第2編」より)
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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