発 熱

2020.05.02 Saturday 07:00
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    「医学上、発熱の原因として今日まで種々の説が行われているが、今日一般的には、発熱中枢なる機能が頭脳内に在って、それが何らかの刺戟によって熱が発生するという説である。
    又、四肢の運動による為と、肝臓及び腎臓から発熱するというのである。
    そうして人間の体温なるものは、食物が燃焼する為に起るというのである。
    右の説が真実であるとして、病気発生の際病毒が発熱中枢を刺戟して発熱するという事は、一体発熱中枢なる機能の性質と、それが刺戟される事によって、いかにしていかなる理由によって、熱を発生するのであるか、恐らく徹底的説明は不可能であろう。
    何となれば、さきに説いたごとく発熱中枢なる機能は全然無いからである。従って、病毒の刺戟などという意味は成立たない訳である。
    かような誤った説が生れたという事は、私の想像によれば、大抵の病気は発熱の際、頭脳に高熱があり、且つ頭痛が伴うので、発熱中枢が頭内に在ると誤認したのであろう。
    故に、あらゆる有熱病に対して、頭脳を氷冷すればよいとしているのである。
    又四肢の運動によって発熱するというのは、それによって温度が加わる為と、浄化作用発生の為の発熱に因る事を単純に推理したのであろう。
    又、肝臓及び腎臓が発熱の原因というのは、大抵の人は、肝臓部と腎臓部は、毒結浄化の為、局部的微熱が常にあるものであるから、それを誤認したと想うのである。
    又、食物の燃焼によって、体温が作られるという事ほど、実に嗤(わら)うべき説はあるまい。
    食物が消化器内で燃焼するという事は、実に不可思議千万である。
    それはちょうど、人間の体温をストーブと同じように推理したのではなかろうか。
    即ち、食物の消化を石炭の燃焼のごときものと想像したのではないかと想うのである。
    私の研究によって得たる発熱の原因を説くに当って断わっておきたい事は、恐らく前人未発の説であろうから、読者はそのつもりで充分熟読玩味せられたいのである。
    そもそも、宇宙における森羅万象一切は三大原素から成立っている。即ちあらゆるものの生成化有は、この三大原素の力によらないものはないのである。
    しからば、その三大原素とは何であるかというと、それは日、月、地である。
    即ち日は火素の根源であり、月は水素のそれであり、地は土素のそれである。
    そうしてこの火、水、土の力が経(たて)と緯(よこ)に流動交錯密合しているのである。
    即ち、経とは天から地まで、太陽、月球、地球の三段階となっているのであって、日蝕の時、日月地が経に三段になっているにみても明かである。
    即ち、天界は太陽中心の火の世界であり、中界は月球中心の水の世界であり、地は、地球中心の土の世界である。
    次に、緯とは、吾々人類が棲息しつつあるこの地上そのものの実体である。
    それはどういう意味かというと、この地球上における実世界は空間と物質との存在であって、物質は人間の五感によってその存在は知り得るが、空間は長い間無とされていた。
    しかるに文化の進歩によって、空間は無ではなく、空気なる半物質(私は仮に半物質という)の在る事を知ったのである。
    しかるに、今日まで空気だけと思っていた空間に、今一つ他の原素が存在している事を私は知ったのである。
    それに対して私は、“霊気”というのである。もっともある種の宗教においては、霊界又は生霊、死霊、憑霊等の説を唱えたり、行者又は霊術師等も霊を云々し、欧米においても、霊科学の発達によって、霊と霊界の研究は相当進歩しつつあり、彼のオリヴァー・ロッジ卿の有名な著書「死後の生存」や、ワード博士の霊界探険記等の記録もあって、これらは相等信ずべきものであるが、私の研究の目的範囲とは全然異なっているのである。
    そうして本来、物質の元素は土であり、あらゆる物質は、土から生じ土に還元する事は、何人もよく知る所である。
    次に、半物質である水の原素は、月球から放散されて、空気に充満している。
    しかるに霊気とは、太陽から放射される物質でもなく、半物質でもないところの非物質であるから、今日まで未発見であったのである。
    故に、最も判り易くいえば、土が物質、水は半物質、火は非物質と言えるのである。
    右のごとく、物質の原素が土で、空気の元素が水で、霊気の元素が火であって、この三原素がいずれも密合して、そこに力の発生があるのである。
    これを科学的にいうならば、三原素なるものが、ほとんど想像も付かない程の微粒原子として、融合活動しているのが、宇宙の実体である。
    故に、吾々の呼吸しているこの空間が、生物の棲息に適する温度や乾度、湿度があるという事は、火素と水素の融合調和によるからで、もし火素が無となり水素のみとなれば一瞬にして氷結すべく、反対に水素が無になって火素のみとなれば一瞬にして爆発し、一切は無となるのである。
    そうしてこの火水の二元素が土と密合して、土が力を発生し、万物が生成化育されるのである。
    この理によって、火は経に燃え、水は緯に流動するのが本性であり、火は水によって燃え、水は火によって動くのである。これを図に示せば、左のごとくである。
    古(いにしえ)から、人は小宇宙といわれているが、右の理は、人体にも当嵌(は)まるのである。
    即ち、人体における火、水、土は「心臓、肺臓、胃」…に相当するのであって、胃は土から生じた物を食い、肺は水素を吸収し、心臓は火素を吸収するのである。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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