「戦力増強に就て」

2020.04.25 Saturday 06:05
0

    それは生産力の大増加である。
    これは再三説いたごとく、結核を初めその他の病気激減と速かなる治癒、病気に対する不安の解消によって、生産戦士の健康及び精神的方面の改善等、ここにもまた医学的消耗が著減するから、莫大なる利益を齎(もたら)す事は当然である。
    そうして本医術を修得し、数ケ月間の修錬によって大抵の病気を治癒すべき技能を得る事である。
    又疾病の根本を知るにおいて、罹病の不安がなくなり、安心して仕事に全力を尽すことにもなろう。
    たまたま罹病するといえども、自己治療又は自然治癒によって容易に全治する事は勿論である。
    右のごとくであるから、今日官民共に大童(おおわらわ)になりつつある戦力増強の問題といえども、急速に解決なし得る事の困難でない事を知るであろう。
    私はつらつら考うるに、この大戦争の今後における推移とその窮極はいかんという事である。それらをここにかいてみよう。
    近代戦は消耗戦といわれている。
    特に今次の大戦においては、その消耗の夥(おびただ)しい事実は周知の通りである。
    従って、戦争が長期に渉るにおいて、最後に到っていかなる様相を呈するかを想像してみるに、物資の消耗においては枢軸国も反枢軸国も、苦心しながらもともかくある程度の供給をなし得るであろう。
    何となれば、物資の原料たる地下資源も農産資源も無限であるからである。
    しかるに人的資源においては、その消耗を補填(ほてん)するには相当の時日を要するものであるから、究極において、各国とも例外なく人的資源の一大涸渇(こかつ)にあう事は明かである。
    従って、今次の大戦争の勝敗は人的資源の、より涸渇せる方が決定的敗北を喫すべき事は論をまたないであろう。
    この意味において、わが日本の今後における重要対策としては、何よりも人的資源の涸渇を防ぐと共に、その素質をして、より優秀さを保たしむる事である。
    勿論今日唱えられつつある戦力の増強に加えて戦力増強の持続にも関心を払われなければならないであろう。
    右の目的を遂行する上において、本医術こそ最も理想的である事を告げたいのである。」 (「明日の医術 第1編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment