「戦力増強に就て」

2020.04.24 Friday 06:04
0

    「私はここに、頗(すこぶ)る大胆なる意見を発表しようとするのである。
    それは外でもない。現下たけなわなる大東亜戦争に対し、日本の戦力を三割以上増強する絶対確実なる方法を明示するのである。
    軍事専門家の常にいうところの勝敗の鍵は、敵の力よりも一パーセント、否○・五パーセントでも勝れる方が最後の勝利を獲るという事である。
    この意味において、戦力三割増強はいかに勝利への決定的福音であるかは、けだし予想に難からないであろう。
    右は勿論、本医術を軍において採用する事である。
    しかしながら、私は軍事専門家ではないから深く専門的の検討は困難であるが、まず何人といえども首肯し得らるるだけの理由を述べてみよう。
    まず直接軍に対する効果としては、本医術を応用するとすれば、何よりも将兵全体の罹病率が半減する事は確かである。
    そうしてたまたま罹病する事あるも入院の必要はほとんどなく、軍務に服しながら短期間に治癒する事である。
    特に顕著なる効果としては疲労の減退であり、その他行動の敏捷、頭脳の明快、耐久力等の好結果が次々表われてくる。
    又、負傷に対する治癒の速かなる事と痛苦の悩みは、従来の何分の一に減ずるであろう。
    従って負傷による死亡率の激減も顕著なものがあろう。
    次に、間接的の利益を挙ぐれば、薬剤や機械の不要となる一事である。
    今日これらに要する人員、資材等の莫大なる負担は驚くべきものがあろう。
    いうまでもなく軍医官、看護兵等の労務、交通及び一切の運搬は勿論、特に薬剤に要する原料が、火薬その他軍機の重要資材となるものも頗る多いという事を聞いている。
    その他各種の予防注射に要する負担、消毒、検診等の煩労、資材、病院の設置及び設備等の不要による利益も鮮少ではあるまい。
    又、糧食においても、いわゆる栄養学的繁雑なる手数の必要がなくなる事も見逃し難い利益であろう。
    以上の外、銃後における利益も莫大なるものがある。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment