「長命の秘訣」

2020.04.13 Monday 06:30
0

    「いかなる人といえども、長命をこいねがわざるものはあるまい。
    しからば、長命者たらんとするにはいかなる方法が最も効果があるかという事である。
    昔から長命の秘訣として食物、飲酒、入浴、性欲等に関係があるとして長寿者の体験談等があるが、いずれも相当の効果はあるには違いないが、今私が提唱するこの長寿法こそ理論からも実際からも効果百パーセントと思うのである。
    従って、私といえども九拾歳を超えたらこの健康法を実行すべく期しているのである。
    前項 栄養食において説いたごとく、人体機能には必要な栄養素を製出すべき働きがあるのであるから、その機能の活動を旺盛にする事が最も緊要である。
    彼の幼少年時代は、その機能の活動が最も旺盛であるから、盛んに発育するのである。
    この理によって、長寿を得んとするには、まず栄養機能を小児のごとく、旺盛にする事であるがそのような事が、実際上出来得るやというに、私はある程度それが可能を信ずるのである。
    それは、いかなる方法であるか…というと極端な粗食をすることである。
    こんなことをいうと、現代人は驚くであろうが、私の説くところを充分玩味されたいのである。
    それは極端な粗食を摂るとすれば、栄養機能は、猛烈な活動をしなければ、必要なだけの栄養が摂れないことになる。
    自然、それは、小児の機能のごとき活動力が再発生することになる、言わば、機能の若返りがおこり始めるのである。
    機能が若返る以上、全体的に若返えらざるを得ない訳である。
    これについて、二、三の例を挙げてみよう。
    昔から仙人という言葉がある。
    仙人等というと現代人は一笑に付するであろうが実際は、立派に、存在していたのである。
    そうして、日本にも相当居たらしいので文献にも伝っている。
    彼の有名な平田篤胤の書いた、寅吉物語や秋葉天狗の事蹟を書いた著書なども素晴しい記録であろう。
    又、近代では、瑞景仙人とその弟子である後藤道明氏(この人は現存していると思う)…等によっても明かである。
    しかし、何といっても仙人の本場は朝鮮であろう。
    私はある本で、朝鮮における仙人の修業法を読んだ事がある。
    それによれば、仙人の食物は松葉を細末にしたものと、蕎麦粉とを水で練り合わして、饅頭のごとき大きさにしたものを、最初は一日に三つ食うのである。
    そうしてそれを何年か続けているうちに、今度は二つにし、ついには一日一個にするのである。
    大抵の人は、そこまでは出来るそうであるが、その次が大変である。
    それは何であるかというと全然、右の饅頭は勿論、食物は一切摂らず、ただ水だけで生きるのであるが、これは非常に困難で、ここで大抵の人は落第してしまうそうである。
    しかし、稀にはそれが実行出来る人があるので、そういう人が、本当の仙人になるという事である。
    昔から仙人は霞を食って生きてるというが、これらを指して言ったのであろう。
    そうして仙人の修業が積むに従って、非常に身体が軽くなり、山谷を獣のごとく馳駆し得らるるようになるそうである。
    これは、私の体験であるが、私は若い頃、肺患に罹り、これを治す為に三月あまり絶対菜食をしたことがある。
    勿論、鰹節も用いなかった。
    しかるに菜食によって非常に身体が軽くなり、よく高い所から飛降りたりした事がある。
    そうして、高所から下を瞰(み)下しても、不思議に恐怖を感じなかった事を今でも覚えている。
    その後、普通食になるに従って、漸次普通状態になったのである。
    又 肉食を旺んにした事もあったが、その頃は身体が重く、又 病気に罹り易かったので、肉を制限してから結果が良くなったのである。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment