「栄養学」

2020.04.12 Sunday 04:47
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    以上の意味において、食物の種類は、各人の境遇や職能によって、取捨選択すべきである事が判るであろう。
    しかしながら、人間はいかなる境遇にあるも、八拾歳以上になれば、物質的欲望や闘争意識の必要はなくなるから、菜食にすることが、最も良いのである。
    そうする事によって健康にも適し、より長命を得る事になるのである。
    右によってみても、粗食がいかに健康増進に適するかという事は明かである。
    しかるに、今日罹病するや、栄養と称し動物性食餌を推奨する以上、かえって衰弱を増し、病気治癒に悪影響を与えるという結果になるのである。
    次に、牛乳についてであるが、牛乳は歯の未だ生えない嬰児には適しているが、歯が生えてからは不可である。
    それは歯が生えるという事は、最早固形物を食してもいいという事である。
    消化機能が発達して固形物が適するようになったという事である。
    これが自然である。
    故に栄養と称して成人した者が牛乳を飲用するという事はその誤りである事は言うまでもない。
    どういう害があるかというと、全身的に衰弱するのである。
    さきに述べたごとく、食物を余り咀嚼してさえ衰弱するのであるから、牛乳のごとき流動物においては、より以上衰弱を来すのは当然である。
    成人者が牛乳飲用の可否について、私に問う毎にいつも私は、嬰児と同様の食物を摂るとすれば、その動作も嬰児と同様に這ったり抱かれたりすべきではないかと嗤(わら)うのである。
    これらも学理に偏し実際を無視した医学の弊害である。
    次に、罹病するとよく粥に梅干を摂らせるが、これらも大いに間違っている。
    元来 梅干なるものは、往昔戦国時代に兵糧の目的を以て作られたものである。
    それは出来るだけ容積が少なく、少量を食して腹が減らないという訳である。
    故に今日においては、登山とかハイキング等には適しているが、病人には不可である。
    病床にあって運動不足である以上、消化し易い物を食すべきである。
    故に、健康時においても、梅干を食う時は、食欲は減退するものである。
    次に、栄養と称し、小児によく肝油を服ませるが、これも間違っている。
    それは食物中には、米でも麦でも豆でも菜でも、それぞれ特有の油分はあるのであるから、体内の機能がすべての食物から抽出する。
    それで、過不足なくちょうど好いのである。
    即ち、糠からは糠油がとれ、菜種からは種油、大豆からは大豆油が採れるにみても明かである。
    しかるに、油のみを飲用する事は偏栄養的で、不自然極まる事である。
    即ち油だけを飲めば、体内機能中の油分抽出機能が退化するから、結果は勿論悪いにきまっている。」 (「明日の医術 第1編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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