「黴菌及び伝染病」

2020.04.05 Sunday 07:43
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    「現代行われている西洋医学における病理はそのほとんどが黴菌説である。
    あらゆる病気に対し、黴菌によって伝染すると解されている。感冒までも黴菌の作用とされている。
    そうして感冒菌のごときは顕微鏡でも視るを得ない微小なるもの、それは濾過性黴菌と称している。
    そうして医学においての解釈は、感冒、ジフテリヤ、百日咳、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎などの病気は、泡沫伝染という事になっている。
    これは、戸を閉め切った室内や乗物の中で、患者の嚔(くさめ)や談笑の際など、霧の如く唾と一緒に飛出し、空気中に浮游(ふゆう)しているのを吸込んで感染するというのである。
    そうして老人は、比較的免疫になっていて、青年特に小児が冒され易いとして、患者に一米以上接近してはならないというのである。
    かように、ほとんどの病気は伝染するというのであるから、これを信ずるとしたら、現代人は生きてゆく事さえ、恐怖の限りである。
    次に、空気以外、最も直接的である黴菌の巣窟は何といっても、貨幣に如(し)くものはあるまい。
    これについて、「北大医学部衛生学教室阿部三史学士が、郵便局、銀行、市場、デパート、食堂、食料品店、個人等多く利用されるところから十円札、五拾銭銀貨、拾銭白銅、拾銭ニッケル、一銭銅貨等取り交ぜ三百四拾五個を集めその銀貨なり、札なりに付着している黴菌を研究した結果、左のごとく大腸菌、パラチフス菌、葡萄球菌、コレラ菌、分裂菌等々、数えきれない程の黴菌が付着していた。
    これらはいずれも人体に害を及ぼすもので、殊に小さな子供等が、無心で銅貨銀貨をなめているなど大いに注意を要するものであり、一方多くの人は、銀貨、銅貨に、結核菌が付着していると思っているだろうが、阿部氏の研究では結核菌は案外少く、人体に及ぼす程の偉力はないと言われている。
    「各種貨幣の黴菌数」 (昭和十一年六月調査)
    まず拾円札、五拾銭、拾銭、一銭各一枚にどれだけの黴菌が付着しているかと言うと・拾円札には、普通黴菌が最高拾六万九千百五個で、平均、五万二千四百九十一個
    ・五拾銭銀貨には  平均千五百五拾九個
    ・拾銭白銅には     二千四百七拾個
    ・拾銭ニッケル白銅には  二千二百三個
    ・一銭銅貨には、      千三十二個
    等である。
    「病菌の種類と数」
    更に大腸菌、チブス菌、パラチフス菌等がどれだけついているかと言えばー
    ・拾円札には     五拾四個
    ・五拾銭銀貨には     四個
    ・拾銭白銅には      三個
    ・拾銭ニッケル白銅には  一個
    ・一銭銅貨には      四個
    等で、拾銭ニッケル白銅が、他の貨幣より少ない事は、発行されて間もない事によるもので、なお一銭銅貨には比較的黴菌の付着数が少ない事は、銅自身が持っている殺菌性に依るものである。
    「場所と黴菌数」
    しからば、どこで使われている貨幣に、最も多くの黴菌が付いているかといえば、一番多いのが市場、次いで郵便局、日用雑貨品店、百貨店、食堂、菓子店、食料品店、個人所有等の順序になっており、個人所有が一番少ないが、これは財布の中に入れられている関係上空気が外部と異って流通しないため、付着した黴菌が培養されない為である。」
    以上によってみても、貨幣にはいかに多くのあらゆる病菌が付着しているかを知るであろう。
    しかしながら、貨幣を手にする毎に消毒することは、いかなる人といえども不可能である。
    又、空気伝染が恐ろしいといっても、電車や汽車に乗らない訳にはゆくまい。
    故に、病菌から全く遁(のが)れ去るには、遥かなる沖合における海上生活か無人島か又は社会と全く交通を絶たれた山奥に一軒家を建てて生活するより以外、理想的方法はないであろう。
    しかし、そのような事は何人といえども、到底出来得る事ではない。
    故に、たとえ、病菌が体内に侵入しても発病しないという健康体になるより外に絶対的安心の方法はないのである。
    しからば、その様な健康は可能でありやというに、私は可能である事を断言して憚(はばか)らないのである。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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