「B・C・Gの注射に就て」

2020.03.18 Wednesday 06:18
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    「最近政府は、B・C・Gなる注射を、一般国民学校卒業後の少年に施行するということに決したということである。
    そうして同注射について、厚生省結核課、KM技師の話によればー」
    技師談
    「わが国の結核の発病状態をみると、未感染者の発病率は、既感染者に比べて実に三倍の高率で、ツベルクリン反応陰性者は、陽性者よりも発病の危険の多いことを物語っています。
    この事実からしても結核にもある種の免疫のあることが判ります。
    この結核の免疫性に着眼して、以前から人工免疫として死菌ワクチン、あるいはごく少量の結核菌の接種などが試みられたのですが、いずれもまったく無効か、却って危険を生じ成功するに至りませんでした。
    B・C・Gワクチンはフランスのカルメット、ゲラン両氏が、一九○四年牛型結核菌(牛に結核を起させるもので人間のものとは違う)の一種に、極めて毒力の弱い菌株を発見したのに始まり、これを人体に接種しても絶対に危険がないばかりか、未感染者に免疫性を付与することを証明し、それの培養ワクチン化に成功したものです。
    わが国でも十余年前より研究され、日本的検討が加えられて、今日実用化をみるに至ったわけです。
    このB・C・Gワクチンは初感染者の爆発的な発病を防止するのが目的で、既にツベルクリン反応が腸性のものには無意味なばかりか、注射した部分に副作用を起すので禁物、厳重なツベルクリン検査による陰性者だけに限らねばなりません。
    B・C・Gワクチンを注射すると、大体二ケ月位で免疫力が顕われて、ツベルクリン反応は陽性に変りますが、その免疫持続期間は約一ケ年です。
    注射の方法は、皮下皮内いろいろな方法がありますが、注射に因る副作用は皆無といえます。
    もっとも人によっては注射部に膿瘍(のうよう)あるいは潰瘍(かいよう)を生することがありますが、これも免疫力の強さの証明で心配はありません。
    わが国のように未感染者の発病率の高い国では、全く日本的性格を備えたものというべきで、今後は新たに農村から都市へ出る青少年、あるいは集団生活に入らんとする人々には必ずこれを実施するようにしたいものです。
    なおB・C・Gワクチンは、現在東京市神田区三崎町一、財団法人結核予防会健康相談所で毎日一定人員に限り診察費のほか無料で実施しています。」(技師談は以上)
    「右によってみれば、同注射は既感染者には効果なく、未感染者即ち陰性者だけに限り効果があるというのである。
    そうして免疫期間は約一ケ年としてある。これを本医術の見地から私は批判してみようと思うのである。
    私は西洋医学の療法は、一時的効果を表わすといえども、その後に到って反って病気を増悪させるものであるといったが、同注射もそうであろうと思うのである。
    そうして同注射が成功したとなし、実用化にまでなったというその理由は、昨年九月より本年六月までの期間中において、国民学校卒業者十万人に施行した所、結核罹病者は三分の一に減少し、死亡率は十分の一に激減したとの事である。
    しかしながら、僅々九ケ月間の実験によってその効果を断定し施行するという事は、あまりに早計ではないかと思うのであるが、事態はそれ程までに結核防止の急に迫られているからであって、又やむを得ないであろう。
    それは別として、私はさきに結核の原因は旺盛なる浄化作用の為であるといった。
    故に九ケ月間好結果を挙げ得たという事は、同注射液の浄化作用停止の力がいかに強烈であるかという訳である。
    即ち最も旺盛なる浄化作用である結核と、最も浄化作用旺盛ならんとする十六、七歳の少年が罹病減少という事実は、同注射の体位低下の強力なる事を如実に物語っているのである。
    従って、同注射後の状態を予想してみるに、体力の低下は勿論であるから、工員などの作業能率の減退は免れ得ないであろう。
    そうして免疫力が一ケ年とすれば再注射を行わなければならないであろうから、その結果はどうなるかというに、発生すべき浄化作用の抑圧を繰返すにおいて、漸次体位は低下し、青年にして老人のごとき体位となるであろう。
    特に女子の妊孕率(にんようりつ)は非常な低下を来すであろう事は勿論である。
    右のごとくであるにみて、一時的好結果に幻惑され、その後に到って予想し難い悪結果を来すべきは、火を睹(み)るよりも瞭(あきら)かである。
    さきに説いたごとく、種痘だけでさえ日本民族の体位が今日のごとく低下したのであるから、効果顕著とされるB・C・Gの注射を施行するにおいて、わが国民体位の前途はいかになりゆくや、憂慮に堪えないものがある。」 (「明日の医術 第1編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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