「学説と現実」

2020.03.17 Tuesday 06:18
0

    「私は、右の記事が事実であるとすれば、実に驚くべき問題を提供したと思うのである。
    それはいかなる点が重大であるかというと、いうまでもなく、現在わが国民の青少年層の大部分が健康体であれば結核容疑者であり、虚弱者であれば結核免疫者であるというー二つの型であるということである。
    次に、今一つここに見逃すことの出来ない重要問題がある。
    それは何であるかーというと、今日までの学説においては、結核発病者は、生来の虚弱者即ち腺病質的児童か又は一時的何らかの原因によって抵抗力薄弱となったゝめ、その隙に乗じてかねて潜入していた結核菌が、爆発的に猛威を逞しくし始め発病するというので、これはすでに医学の定説にまでなっている事実である。
    しかるに、右の隈部氏の指示したごとくであるとすれば、今日までの医学の説は全く覆えらざるを得ない事になり、体育と医学を結びつけるーなどということは、到底言うべくして行われ難いであろう。
    しかし、万一結び得るとして、虚弱者が幸にも体育に堪え得る程度の健康になったとしたらそれは畢竟(ひっきょう)、結核容疑者の仲間入りをするという事になるから、いずれが是か非か、判断に迷わざるを得ないという訳になろう。
    再三述べたごとく、結核は旺盛なる浄化作用であるという私の理論を、右の新聞記事がよく裏書している事を知るであろう。
    次に、右の記事中にある「結核は鍛錬によっては決して防止出来るものではない」ーという一事は何を示唆しているであろうか。
    今日体育に携わるものゝ大いに考慮しなければならない重要事であろう。
    同、スポーツの選手がいかに多く肋膜炎や結核でたおれるという一事も、その原因を突止めなくてはならない。
    これは私の考察によれば、一種類の競技を持続する場合、さきに説いたごとく、その神経集中個所に毒素固結を生ずる。
    それがたまたま浄化作用により、発熱、咳嗽、喀痰等の症状発生し、医診は結核と断定し、誤れる療法によって、ついに生命を落す事になるのである。
    又肋膜炎は胸部の打撲、又は腕力、強烈なる腕の使用によることが原因である。」 (「明日の医術 第1編」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment