「各国に於ける人口動態」

2020.02.25 Tuesday 08:51
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    左に欧州各国の状態を示してみよう。
    英国における出生率は次のごとくである。
    期間  人口1万人に対する出生数平均  期間  人口1万人に対する出生数平均
    一八四一−五○年   三二六  一九○一‐一○年 二七二
    一八五一‐六○年   三四二  一九一一‐一五年 二四一
    一八六一−七○年   三五二  一九一六−二○年 二○一
    一八七一−八○年   三五五  一九二一−二五年 一九九
    一八八一−九○年   三二五  一九二六年    一七八
    一八九一‐○○年     二九九  一九三○年    一六八
    Shiras教授前掲論文による
    一八七一−八○年に至るまでは出生率は増加の一路を辿ったのだが、爾来その方向を転じ加速度的に減少している。
    即ち三五五より戦前には二四一となり、一九二六年は一七八、一九三○年に一六八となった。
    一八七一‐八○年より一九二六年に至る半世紀間は低落を続け、ほとんど半分以下に減退した。
    そうしてこれをフランスの減退と比較すればその速度は約二倍半程急速である。
    けだしフランスは一二五ケ年(一八○一−一九二六年)間に四○%余低落したに過ぎぬからである。
    この事実は英国をして痛く驚愕せしめタイムス紙のごときは「この世紀に入って以来、英国の人口統計の著しき特徴たりし出生率減退は依然として継続し、むしろその減退率は益々速かならんとしている」と述べている。
    英国最近の統計は左のごとき悲観すべきものである。
    年次 人口1万人に対する出生数平均   年次 人口1万人に対する出生数平均
    一九二一年  一三四   一九二四年  一八八
    一九二二年  二○四   一九二五年  一八三
    一九二三年  一九七   一九二六年  一七八
    右のごとく一九二六年にはフランスの出生率(一八八)にも劣っている。
    次にドイツを見よう。
    期間  人口1万人に対する出生数平均  期間  人口1万人に対する出生数平均
    一八四一−五○年 三六一   一八九一−一九○○年 一六八
    一八五一−六○年 三五三   一九○一−一○年   三三○
    一八六一−七○年 三七二   一九一一−一五年   二八五
    一八七一−八○年 三九一   一九一六−二○年   一七九
    一八八一‐九○年 三六八   一九二一−二五年   二一九
    一八七一‐八○年に至るまでは出生率は漸次高くなってきたが、爾来かなり急激な減少を初めた。
    即ち三九一より二十世紀の初頭には三三○と低落した。
    しかしドイツにおいては一般に出生率のはなはだ旺盛なる事に慣れていたのでこの突如たる減退を信ぜずディーチェル氏はこれを懐疑を以てみワグナー氏は一九○七年に一時的出生率の干潮に因るとなし、フィルルクス氏は統計的計算の誤謬に因るとした位であった。
    この様に、ドイツの学者達は出生率減退を信じなかったのである。
    しかしながら事実は依然としてその低落を継続し、一九一三年には二七六に下った。
    即ちこれはドイツが四十個年間にその出生率の三分の一を失った事を意味するのである。
    次に戦後における状態は次のごとくである。
    年次 人口1万人に対する出生数平均   年次 人口1万人に対する出生数平均
    一九二一年  二五三   一九二四年  二○二
    一九一三年  一三九   一九二五年  二○四
    一九二三年  二○八
    一八七一年−一九二五年に至る期間に出生率は三九一より二○四に減退した。
    即ち半世紀にその出生率の半分(四八%)を失った。
    しかもその減退は規則的に継続している。
    その下降の速度はフランスの二倍半となっている。
    次にイタリアをみよう。
    年次 人口1万人に対する出生数平均   年次 人口1万人に対する出生数平均
    一八六一−一八七○年 三七一  一九○一−一九一○年 三二七
    一八七一−一八八○年 三七○  一九一一−一九一五年 三二八
    一八八一‐一八九○年 三七六  一九一六−一九二○年 二二九
    一八九一‐一九○○年 三四九  一九二一−一九二五年 二九一
    イタリアも出生率減退の現象を認め得るが、英国やドイツ程はなはだしくない。
    しかし最近における出生率減退は相当顕著なるものがある。
    年次 人口1万人に対する出生数平均   年次 人口1万人に対する出生数平均
    一九二一年  三○三   一九二四年  二八二
    一九一三年  三○二   一九二五年  二七五
    一九二三年  二九三
    しかもその減退は依然としていて一九二九年は二五一となっている。
    これにおいてかイタリア政府は国民に一大警告を発し、出生率がこのまま減退を持続するにおいては二十世紀末には一大危機に遭遇すと為し、大いに人口の増殖を奨励している。ともかくもイタリアにおいては一九二五年までの約四十年間にその出生率の四分の一を失った事になる。
    更にラヴィノウィッチ氏はベルギー及びスエーデン、ノルウェーについて統計を掲げ出生率の減退を示している。
    すなわちベルギーの出生率は約八十ケ年間に四十%を失い、スエーデン、ノルウェーについては前者は時々フランスと同じ道程を歩み一世紀間に出生率は半減し、後者はその出生率減退はスエーデンより後れて始まったが十年間に四○%を失った。
    なおスイスは半世紀間に(一八七五〜一九二六年)出生率の四○%を失った。

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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