「医学は退歩したか」

2020.02.09 Sunday 08:16
0

    「去る五月下旬の朝日紙上に、こういう事が掲載してあった。
    非常時局の中堅層をなす我が壮丁(そうてい)の体格及び健康が近年次第に低下しつつあるので当局では深く憂慮し、二十七日午後三時から九段偕行社に陸軍側から小泉医務局長、中島二等軍医正、園田一等軍医、文部省側から岩原体育課長、大西学校衛生官、伊藤事務官が出席、対策協議する事となった。
    こう云う陸軍、文部両当局の協議は今度初めての企てである。
    我国壮丁の体格は筋骨の弱い丙種、丁種の者が大正十一年から十五年までは千人に対し二百五十人であったのに、昭和七年度は千人に対し三百五十人に増し、翌八年は更にこの兵役免除者が四百人に増加している。
    又壮丁の胸部疾患も明治三十二年には百人中二人だったのが、現在ではこの十倍、即ち百人中二十人に増率し、身長に比して体重の増加は著しく劣って居り、教育程度が進むにつれて体格は悪く丙種丁種が多いという悲しむべき状態である。
    この壮丁の悲況を陸軍、文部両当局の協議がいかに打開するか、各方面から注目されている。
    右のごとき、明治三十二年から三十数年を経た今日、兵役不能者が十倍にもなったという事は実に驚くべきである。
    国家的に観てこれ以上の重大問題が他にあるであろうか。
    須(すべか)らく国家全体の智嚢を搾って、その原因を検討しなければならないのである。
    しかも一方医学は非常に進歩したという事になって安心して居るにも不拘(かかわらず)、事実は反対にそれを裏切っているのはいかなる原因に拠るのであるか。
    この趨勢を以てすれば、今後といえども殖えるとも減少する見込はないと想えるのである。
    何となればその根本原因が適確に判明されて、それに対する方策が確立されなければである。
    しかるにこの重大事に対して、当局も世人も案外無関心で居る、ただ一部の当局のみが焦慮しているに過ぎないとは、聖代におけるまことに不可解事であるといってもよい。
    この一事に徴してみるも、現代医学衛生における根本的欠陥がなければならない事である。
    故にこの重大事を救うの道は、この欠陥の発見で、それ以外には絶対無いと言えよう。
    しかるに私は、その欠陥を発見し得たので、発見と共に全く驚歎久しゅうしたのである。
    それは一体何であるか、以下詳細に述べてみよう。
    これら激増しつつある虚弱者特に結核患者(弱体児童を含む)に対し、現代医療は何をして居るのであろうか。
    真に防止しつつあるのであろうかというに、実際は防止所ではなく反対にどしどし作っているという一大奇怪事である。
    そうしてこの様な信ずべからざる程の重大事に誰もが気が付かないという問題である。
    この意味において、むしろ医療なるものが無かったなら、兵役不能者は一大激減をするであろうとさえ思うのである。
    否事実そうである事は火を睹(み)るよりも瞭かである。
    それは医学が進歩するに随って漸増するという一事が遺憾なく証拠立てている。
    千人中二百人にも兵役不能者が増加したという生きた事実こそ、私の右の説を裏書して余りあるのである。
    噫(ああ)、国家の前途に対して、これより大なるものは無いであろう。
    しからば右のごとき、医学の誤謬とは何であるか。
    それを赤裸々に述べなくてはならない。
    それを述べるに当って、その誤謬の根本とも言うべき病気の本体から明かにする必要があろう。
    そうして医学におけるそれの認識が一大錯覚に陥ってるという事実である。
    それは医学においては、何故に病気が発生するかという事には未だ不明であって、医学上における目下のそれはあらゆる病原が黴菌であるという他動的原因、即ち他原説である。
    しかし、これがそもそもの誤謬である。否、全然誤謬ではないが、実は一面の解決でしかない事である。
    しかるに、私の研究によれば、病気の本体は実は人間自身の自然浄化作用である。
    即ち、自原説である。それは何か、人間が生存上、あらゆる原因に因って不断に汚濁が堆積するのであって、それが為に血液の不浄化となり、その不浄化が病原となるのである。
    が、それは不浄血液そのものではなくて、その不浄血液を浄化さすべき工作そのものである。
    故に、病気現象なるものは、浄化作用としての苦痛でしかないのである。
    そうして結核患者は何が故に発生するのかといえば、それは汚濁が不浄血及び膿汁となって、何人といえども、頸部付近と肩部付近に溜積するのである。
    そうして、その汚濁の溜積がある程度を越ゆる時、それの解消作用が起るのであって、その、動機促進が冬の寒冷でその工作が風邪である。
    故に、風邪に罹るや、それら汚濁を解溶すべく発熱が起り、膿は稀薄となるので、喀痰及び鼻汁とし排除されるので、それに依って人体は健康を保ってゆけるのである。
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment