「脳溢血及び脳充血」

2019.12.03 Tuesday 09:31
0

    「この病気は、近年益々増加の傾向があって、高血圧の人などは、非常に恐怖を抱いて居るが、これは少しも驚くに足りない。
    余のところへ来れば、雑作なく治癒して、絶対脳溢血は起らない事を保証出来るのである。
    この病気がなぜ多くなったかと言うと、現代日本人は、肉食を多く採り、無暗に薬剤を服用するから、血液は混濁する計りである。
    その上、頭脳を過度に使用するから、ちょうど脳溢血を製造して居るようなものである。
    前述のごとく、この病気は、血液混濁が原因であって、動脈硬化と同じ訳である。
    血液中の混濁は、不断の浄化作用に依り、その残渣(ざんさ)とも言うべき毒血は、主に後頸部、延髄付近に集中溜結するものである。
    そして、これは必ず、右か左か一方に限られており、診断の場合、左右いずれかを指圧すれば、はっきり分るのである。
    しかるに、この毒血の溜結が益々増量して、ある程度を超ゆる時、毛細管を破って、小脳部へ溢出するのである。
    これを称して脳溢血というのである。
    そしてこの溢血が多量による悪性を脳充血というのである。
    この病気の特長として、一時、人事不省に陥り、軽症は一昼夜位、重症に到っては二週間位を、そのまま持続するのである。
    幸いに覚醒するや必ず、左右いずれかの腕、及び脚部麻痺してブラブラとなり、一時は、全然、知覚を失うもので、特に重症においては、覚醒するや舌の自由を失い、言語不能となるのである。又病気発生の場合、鼻血、涎(よだれ)、嘔吐等を伴うものである。
    この病気は、前兆としては、血圧の昂騰(こうとう)、頸部及び肩の凝り、手足の一部的麻痺、言語の不明晰等で、かくのごとき症状のある場合、余の療法を施せば、普通二三回ないし五六回にて全く治癒するのである。
    不幸にして、発病するとても、直に浄血療法を施せば、一週間ないし二週間位にて、大体快癒し、言語は、大略(たいりゃく)平常のごとく、腕は自由となり、歩行も可能となるのである。
    しかし、何分一時ながらも、麻痺したる後なるを以て、全く平常通りになるには、一箇月位を要するのである。
    しかるに一般世人は、医療に依って回復せんとするのは止むを得ないが、医療によっての治癒は、なかなか困難で、医学的には療法がないとさえされている。
    しかし、症状に依っては二三年にして自然に治癒するものもあるが、悪性のものは十数年に渉っても離床する能わずして、ついに死に到る者もあって、この病気位、人により、重軽のはなはだしいのはないのである。
    従って、治癒の時日を予定する事の困難なのは勿論である。
    中には悪性でなくも、誤れる療法を持続せられし為の障害によって早く治るべき症状も、長日月を費さねばならなくなった患者も、すくなくはないのである。
    そして、痛みのある症状ほど治癒し易いのは、経験によって瞭(あきら)かなところである。 (岡田仁斎)」 (「日本医学の建設(三)」より)

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
    Comment