「日本医学の建設 二 胃病」.2

2019.12.01 Sunday 08:26
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    近来、医家において消化薬を極力制限する傾向を見るのはまことに喜ばしい事である。
    前述のごとく、消化薬達続服用と、消化良き食物摂取の結果、胃は睡眠状態に陥り、ついに弛緩する事となる、これを胃下垂というのである。
    次に、今一層恐るべきは、消化薬の連続作用による胃壁の破壊である。
    元来、消化薬はその食物を消化良く、柔軟化するばかりでなく知らず識らずの裡(うち)に胃壁も共に柔軟化されてゆくものである。
    その軟化された胃壁に偶々(たまたま)固形食物が接触すれば、その個所が破壊される。
    それが、胃の激痛となり、又出血もするのである。
    これが胃潰瘍である。又こういう事もある。それは、最も緩慢に胃壁が柔軟化され、極小破壊又は胃壁を血液が滲出する事がある。
    そういうのは激痛と出血がないから胃潰瘍とは気が付かずに、時日を経てゆく、そういう血液の溜積が古血となって便通に交り、又は嘔吐の中に見る事によって始めて胃潰瘍を知る事が能くあるのである。
    故に真の療法としては、積極的に胃の強力化を図らなければならない。
    その理から推すとどうしても消化薬は不合理であるから出来得るだけ避けて食物においても可及的普通食を摂らせるのである。
    そうすると、胃の抵抗を強め活動を促すから、水膿溜積を反対に、胃自身の力によって積極的に外部へ向って圧迫し、排除する事になる。
    往年、食物医者の石塚某氏が流動食同様の物を摂取し居る患者に対し、直に沢庵と塩鮭の茶漬を奨め意外なる、効顕を奏した事を聞いた事が度々あったのはこの理に合っているからである。
    随って、胃の初期患者には、積極的胃の強健法を、奨めなければならないのである。
    それには第一出来得る限りの運動と場合に依り一回又は一日位の絶食も良し、食餌に日本食が最も適当であって、就中(なかんずく)、菜の類の香の物で茶漬等が非常に効顕ある事は、余が実験上保証したいのである。
    もっとも香の物は、酸味の多い古漬が最もよく、まず一日の中一食位の、香の物、鮭、干物等の茶漬を食うのが、初期患者に最も良いのである。
    水膿溜積を溶解するに、医療電気を応用するのは相当効果がある様である。 (仁斎)」
     

    category:戦前の医学論文 | by:mistoshicomments(0) | -
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