自然栽培に就いて.2

2019.11.07 Thursday 09:01
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     何しろ本農法は、従来のやり方とは全然反対であるから、容易に転向出来ないのも無理はないが、といってこれほど事実が証明している以上、信ぜざるを得ないはずである。以下それらを一層詳しくかいてみよう。まず我国民が先祖代々長年月肥料を施して来た結果、我国農地全部は汚され切っており、そのため土は酸性化し土本来の性能は失われ、人間でいえば重病人の体質と同様になっているのである。その結果作物は土の養分を吸収する事が出来ず、肥料を吸収して育つように変質化してしまったので、全く麻薬中毒と同様である。ところで今までとても農事試験場や農民の中にも、無肥耕作の試験をした事もあったが、何しろ一年目は非常に成績が悪いのでそれに懲りて止めてしまったという話は時々聞くので、この事なども肥料迷信に拍車をかけた事はもちろんである。そんな訳で耕作者は肥料をもって作物の食糧とさえ錯覚してしまったのである。事実自然栽培にした最初の一年目は葉は黄色く、茎は細く余りに貧弱なので、付近の者から嘲笑慢罵、散々悪口を叩かれ、中には忠告する者さえあるくらいで、もちろん肥毒のためなどとは夢にも思わないからである。ところが栽培者は信者である以上絶対信じているので、辛い我慢をしながら時を待っていると、二年目三年目くらいからようやく稲らしくなり、収穫は増えはじめ、しかも良質でもあるので、今度は嘲笑組の方から頭を下げ、自然組の仲間に入る人達も近頃メッキリ増えたという事である。そうして肥毒が全くなくなるのは、まず五年はかかると見ねばなるまい。その暁私が唱える五割増産は確実であって、これが六年となり、七年となるに従い驚異的増収となり、やがては十割増すなわち倍額も敢(あ)えて不可能ではないのである。というのは分蘖(ぶんけつ)は倍以上となり、しかも穂に穂が出るので、そうなったら倍どころではない。一本の茎の実付き千粒以上にもなろうから、到底信ずる事は出来ないのである。
     ここで米というものの根本的意味をかいてみるが、そもそも造物主が人間を造ると共に、人間が生きてゆけるだけの主食を与えられた。それが米麦であって、黄色人種は米、白色人種は麦となっている。それを成育すべく造られたものが土壌である事は、何人も否定する事は出来まい。としたら人口がいかに増えても、その必要量だけは必ず生産されるはずである。もしそうでないとしたら、必ずやどこかに大きな誤りがあるに違いないから、その誤りを発見し是正すればいいので、それ以外増産の道は絶対あり得ないのである。この意味において我国の人口が現在八千四百万人とすれば、一人一石とみて八千四百万石は必ず穫(と)れるはずである。ところが現在は平年作六千四百万石としたら、二千万石は不足している訳で、この原因こそ金肥人肥のためであるから、その無智驚くべきである。ところが喜ぶべし、私はこの盲点を発見し、ここに自然農法が生まれたのであって、これによれば五カ年で五割増産となるから九千六百万石となり、優に一千二百万石は余る事になる。しかも肥料も要らず、労力も省け、風水害にも被害軽少で済、現在最も難問題とされている虫害はほとんど皆無と同様となるとしたら、その経済上に及ぼす利益は何千億に上るかちょっと見当はつかないであろう。この夢のような米作法こそ開闢(かいびゃく)以来いまだかつてない大いなる救いといえよう。私はそれを立証するため、数年前から多くの農民を動員し、実行を奨励した結果、予期通りの成果を得たので、ここに確信をもって天下に発表するのである。しかも報告者の宿所姓名まで詳記してあるから、不審のある場合直接本人に打(ぶ)つかって訊けば何よりである。

    category:自然農法 | by:mistoshicomments(0) | -
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