「明日の医術 第二編 付録」

2020.09.13 Sunday 06:41
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    その案というのは左のごときものである。
    一、まず、結核患者十人を選択する。その理由は、この病気は余り差異なき同一症状を択ぶに都合が良いからで、又今日最も解決を要すべきものであるからである。
    右十人に対し、西洋医学(内科的又は外科的)、灸点、栄養療法、電気、指圧、精神療法、霊気療法、自然療法、その他の種類を合せ、合計十種の治療者を選び、最初一ケ月間の予定を以て治病試験を行うのである。
    その結果として、ある者は良好に向い、ある者は無効果であり、ある者は悪化するであろう。
    しかし一ケ月間のみにては、その結果は確実とはいい難いから右の方法を繰返すのである。
    かくする事十回即ち十種の療法を十ケ月続ける訳である。
    かようにすれば、有効果と無効果と悪化との区別が判然とするであろう。
    従って政府においては無効果及び悪結果の療法は、有効果療法に転向させるのである。
    勿論同じ効果であっても、十種の中、最優効果を採択すべきである事は勿論である。
    右のごとき、第一位に採択されたる療法こそ一挙に難問題である国民保健問題ー特に結核問題を解決するに役立つであろう。
    しかも僅々(きんきん)十ケ月間の日子(にっし)と些細(ささい)の手数によって解決さるるのであり、その効果は根本的、永遠的であり、しかも重大時局を解決する基本的条件となる以上ぜひ実行すべきであると思うのである。
    右の方法実行の場合、相当の困難と思う事は、その治療者の選択である。
    これについて私見をいえば、官報又は新聞紙の広告等によって弘く天下の逸材を集めるのである。
    しかしながら問題の性質上、余程の自信がなければ応じられない訳であるから、申込者は相当の技能者とみて差支えなかろう。
    従って万一多数の場合は前述の十人宛(ずつ)を何組に増加しても良かろうしそれが一ケ月宛の試験によって無効果又は悪結果は漸次淘汰され、優秀者のみが残る事になり、その優秀者から又選択せられて、最後に最優者即ち第一位の療法が残る事になる訳である。
    但し、いかに優秀な療法であっても門外不出的の一代限りのものであってはならない。
    何人といえども修得すれば実効果あるものでなくてはならないのである。
    右のごとき試験の結果採択されたる第一位の医術こそ、将来の日本医術と決定すべきであろう。」 (「明日の医術 第2編」より)

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